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イギリスにおけるボランタリー・セクターを捉えづらくしていることの理由としては、どのような側面に焦点を当ててボランタリー・セクターを理解するかについての全体的な枠組みが不明確であることをあげることができる。例えば、ボランタリー・セクターは、大別して自助型(self−help)と慈善型(philanthropy)に分けることができる。前者は援助を必要とするものと援助を提供するものが、程度の差はあるものの、同一である場合であり、後者は援助を必要とするものと提供するものが異なる場合を類型化したものである4)。ただしこの類型化も、コミュニティ関係等の活動を考慮すると、それらの中間的な形態が多様であることがわかり、援助を受けるものと提供するものとの関係は、特定の側面を分類するにすぎないといえる。

 

また、ボランタリー・セクターの主要な要素として自発性・任意性をあげたが、これらは別の側面から見ると、独立性・自立性を意味している。この場合に独立性・自立性とは、観念や価値観、特定の政策や実務、他の社会的組織・団体の活動や構造からの独立性・自立性を意味していると考えられる5)。すなわち、このような独立性は、既存の社会的組織とは異なった観念や価値観等を許容することであり、あるいはそれらに対する挑戦となることを意味することになる。とりわけ、画一的で集権的な観念・価値観に対して、ボランタリー・セクターは不可避的に多くの問題を投げかけることになる。しかしながら、独立性・自立性がボランタリー団体に強制されるわけではない。
このようにボランタリー・セクターを捉える若干の視点を取りあげるだけでも、ボランタリー・セクターを総体として捉えることの難しさが理解できよう。しかし、上に取りあげた視点がまったく無意味であるとか、ボランタリー・セクターの特質として有効でないということを意味しているわけではない。
そこで、イギリスにおけるボランタリー・セクターの活動や構造の一部を理解することを目的に、以下では、ボランタリー・セクターと重要な関係にあるチャリティの制度を検討し、ついで今回のイギリス調査におけるヒアリングを中心にして、ボランタリー・セクターをめぐる様々な状況を検討してみたい。

 

2. チャリティの制度

 

(1) 概要
チャリティとは「慈善団体」と訳される場合があるが、慈善団体という枠を超えている

 

 

 

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